教具『ピンクタワー』!集中力を促す効果のナゾに迫る|モンテッソーリ教育

ピンクタワー横並べ画像

ピンク色に塗られた大きさの異なる10個の積み木。

子供が笑顔で楽しそうに積み上げていくものかと思いきや、眉間にシワを寄せるほど目と手に全神経を集中させていきます。

いったいどんな秘密があるのでしょうか?

今回は、モンテッソーリ教具「ピンクタワー」に秘められた特有の効果と魅力、使い方について紹介させていただきます。

ご家庭で教具を用意する場合の注意
もし、お子さんがモンテッソーリ園などで教具に出会う機会があるのでしたら、ご家庭に教具を用意しないことをおすすめします。
モンテッソーリ教育では、教具の第一印象を大切にしており、逆効果になる場合があるからです。
僕のように、定員オーバーなどで「モンテッソーリ園に入れなかったけれど、モンテッソーリ教育を通じて子供の自立心を育てたい!」と思われている方の参考になれば幸いです^^

モンテッソーリ教具の『ピンクタワー』とは

モンテッソーリ教具「ピンクタワー(pink tower)」は、大きさの異なるピンク色の木製立方体10個からなる教具です。大きい順に積み上げると、その名の通り「桃色の塔」のできあがりです。

この教具は、感覚を育てる教具に位置づけられており、サイズが異なる立方体を積み上げながら、大きさを見分ける力(視覚)を育てます。

対象年齢は2歳半からが目安とされていますが、子供が親指・人さし指・中指の3本指でつまめるようになってからが適していると言われています。

つまむ練習になる教具「円柱さし」については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

円柱さしの全4種類の画像

誤りを自己発見できる『円柱さし』が導く4つの効果!

2019年12月20日

10個の立方体に隠された「形と数の関係」

ピンクタワーの立方体サイズ一覧画像

ピンクタワーの立方体10個のサイズは、大きい順に1辺が10cm、9cm、・・・、2cm、1cmと、1cm刻みで小さくなり、縦・横・高さの三次元の変化から「大きさ・体積・量の変化」を見て感じることができます。

色においても、子供が大きさだけに集中できるように、ピンク1色に統一されています。

そのうえ、立方体の個数や1辺の長さ、大きさの変化には、それぞれ意味があり、将来の算数教育の準備にもなります。

具体的には、10個という個数から十進法の感覚を、1cm~10cmの長さから国際基準のメートル法の感覚を養うようなっています。

加えて、1辺10cmの最大立方体は、1辺1cmの最小立方体の1000個分になっており、子供が「1000」という数字に出会った時の「立方体の形」と「数」を結びつける役割もしてくれるのです。

市販ピンクタワーの注意事項

ところが、ピンクタワーの販売サイトを見ると、大きさ・個数・色が異なる類似品を見かけます。

先ほど紹介したように、1辺の長さや立方体の個数、さらにはピンク1色で統一されていることなどにも1つ1つに意味がありますので、類似品では本来期待する効果が損なわれてしまいます。

それだけでなく、この後段階で使う他の教具との関係性までも失うことになります。

ですので、ピンクタワーを購入される場合は「ピンク1色、1cm~10cmの立方体10個のセット」にすることをおすすめします。

ピンクタワーや関連教具については「子どもの発見」で詳しく説明されているので、モンテッソーリ本人の教具に対する考え方を知りたい方は、読んでみてください。

使い方の6つの基本!子供の工夫で広がる多彩な遊び方

ピンクタワーの使い方は、積み上げるだけでは終わりません!

子供が工夫をしたり、大人がヒントを伝えたりすることで、いろいろな遊び方ができます。その基本となる6つの使い方をご紹介します。

ピンクタワー使い方例の画像
  1. 垂直に積み上げて塔をつくる
  2. 積み方を変える(角寄せ・らせん状・逆さまなど)
  3. 水平に並べる(規則的・不規則的)
  4. 「取ってくる場所」と「積む/並べる場所」の距離をとる
  5. 積み上げた/並べた状態から立方体を抜き取り、その場所を当ててもらう
  6. パターンカードと同じ形をつくる

これらを組み合わせることで、単なる10個の立方体とは思えないほど、幅広い遊び方ができます。

ピンクタワー特有の2つの効果

それでは、このようなピンクタワーを使うことで、子供のどんな能力が育ち、そしてどんな変化が現れるのか、ピンクタワーだけが持つ2つの効果を紹介します。

わかっちゃった「大きさ概念」

ピンクタワーの言葉の紹介の画像

大人は何気なく「大きい・小さい」を使っていますが、子供にとっては抽象的で理解しにくい言葉のようです。

この「大きい・小さい」という曖昧な概念を、立方体の大きさの違いを利用して、具体的に示すことができます。

では、どのように伝えるかというと、立方体同士を比べながら次のように紹介します。

  • これは、大きい/小さい
  • これはこちらより、大きい/小さい
  • これは一番、大きい/小さい

こうすることで、子供は自分の中に明確な大きさの概念を形成することができます。

大きさを理解した娘はというと、身近なものを見つけては 「これ大きい!」「これ小さい!」とひっきりなしに言っていた時期がありました。確か3歳くらいだったと思います。

娘にとって、曖昧だった言葉をはっきり認識できたことは、よほど嬉しかったのでしょう。

つまんで育つ「大きさ感覚」

立方体をつまむ様子

ピンクタワーで遊んでいると「大きさ感覚」が育まれます。

なぜなら、立方体をつまみ上げるにつれて、「指の開き具合」と「見た目の大きさ」が結びついていくからです。

実際に、大きさ・重さの異なる立方体を3本指で持ち上げてみると、指の広さや力加減の変化を感じることができます。

この「つまむ」動作を繰り返すことで、大きさ感覚を体で覚えてしまうのです。

部屋の半分という娘

図鑑を見ていた娘が突然、「すっごく大きい!お部屋の半分くらいだよ!」と絵を指さしながら、見たことのない太鼓の大きさを想像して、感動していました。

この驚きは、物事をより深く理解できたからこそ味わえる感情であり、子供の成長を実感した瞬間です。

ちなみに、娘が驚いていた図鑑は「楽しく遊ぶ学ぶ こくごの図鑑」になります。言葉について分かりやすいイラストで描かれており、言葉に関心を持つ5歳前後のお子さんにおすすめです。

子供の心を惹きつける3つのポイント

ピンクタワーで遊んでいると、なぜか集中してしまう!

このカラクリは、使ってみてよく分かりました。特におしゃべりな娘が、黙々と遊んでいる様子から気づいた、3つのポイントを紹介します。

自分で気づけるよ!だって変だもん

ピンクタワーの誤った積み方の画像

ピンクタワーは、積む順番を間違えても、子供が自分で気づけるようになっています。

間違えたまま積み上げると、小さい立方体に大きな立方体が挟まれ、不格好な中膨れの塔ができあがります。

その不格好さが「変だよ~!」と子供の視覚に訴えかけ、誤りに気づかせてくれるのです。

初めのうちは大小関係なく積み上げていた娘ですが、何度か積んだり崩したりした後、急に大きい順で積み上げていきました。

このように自分でおかしな所に気づき、修正する様子を見ると、「できるようになりたい」という子供の強い欲求を感じます。

慎重に…息をするのも忘れて「超集中」

ピンクタワーの最小立方体を積み上げる画像

立方体を積むことが、なぜ子供を夢中にさせるのか?この疑問は、大人の僕が自分の手で塔を作ってみて良く分かりました。

それは、塔の頂上に近づくほど緊張感が増してくるからです。

初めのうちは大きく・重たい立方体で安定感がありますが、積み上がるにつれて立方体は小さく・軽くなります。

特に最後に乗せる一番小さい立方体は、わずかな力でズレてしまいます。乗せる面積も狭いので、息を止めて集中しないと簡単に落ちてしまいます

このスリリングな感じがたまらないのですね。

きれいに積み上げるには、腕や手の位置を精度よく決める必要があり、娘は口先を尖らせながら積み上げていました。

ピンクタワーが、集中力や器用な手先を育ててくれると言われるのも納得です。

大人でも気を抜くと崩してしまう塔を、自分の手で積み上げられた時の娘のドヤ顔は、達成感に満ちており、親として何よりも嬉しいことです。

置き方で磨かれる「美的感覚」

交互に積み上げたピンクタワーを上から見た画像

ピンクタワーは積み方・並び方を変えるだけで見栄えが大きく変化します。これは子供とって不思議なことのようです。

交互に積み上げた塔を作った時、娘は塔のまわりを回ってみたり、四方からじっくり見たりしながら、「バラになったよ!」とうっとりしていたことがありました。

自分が想像したものを作り出す喜び工夫から発見した喜びをいっぱい感じることができるのも、ピンクタワーの魅力ですね。

美的感覚まで養われているかもしれないと思うと、子供の将来にワクワクしてしまいます。

最後に

色鮮やかなモンテッソーリ教具「ピンクタワー」はいかがでしたでしょうか。

子供の可能性をめいっぱい発揮できるように考えられているからこそ、子供を魅了してやまないのでしょう。

特に3歳前後の積むことが大好きなお子さんにとっては、よだれが出てしまうほどの魅力があると思います。

子供と一緒に、塔のてっぺんに小さい立方体を積む時の、ドキドキ感を味わってみるのはいかがでしょうか。